シャープ 町田勝彦会長に聞くを読んで。

10/26付け朝日新聞の経済6面に、「シャープ町田会長に聞く」とのインタビュー記事が掲載されています。「大企業」のトップのものの見方、考え方を垣間見る思いで興味深く読ませてもらいました。

 読んだ感想をひと言で言うと、「自己本位の商魂」を見せていただいたということでしょうか。

 日本の国際力低下がとまりません。との問いに、非常に心配なのは小子化、円高と法人税率の高さ、他国との経済連携協定や自由貿易協定交渉の進展、労働・環境規制の五つだ。特に少子化がすすめば市場が縮んで魅力がなくなり、生産労働者が減る。社会保障費も膨らみ労働コストがすごく高くなる。と述べています。

 町田会長は五つの問題を、国際競争力の課題として挙げましたが、なるほど、家電メーカーのシャープは少子化で国内市場が縮まれば、自社製品は売れなくなり、労働力人口が減れば逆に労働コストも膨らむことを懸念せざるを得ないとして、少子化には明快にノーを表明しています。

 ならば、インタビューもさらに突っ込んで、町田会長に「少子化」対策を聞けば、さらに興味ある意見が聞けたと思うのですが、少子化についてはここでお仕舞いです。

 ここで私が云いたいのは、「少子化」の原因はどこにあるのか? ということです。経済界には責任が無いとは言わせません。低賃金・使い捨て労働・長時間過密労働こそ、実は「少子化」の源ではありませんか。これらの問題をどのように経済界として改善していくのか、改善する考えはあるのか無いのか? おそらく「無い」と断言して間違いないのではないでしょうか。なぜなら、それらは良くなるどころか悪化の一途をたどっているのですから。

 労働・環境規制の動向を五つの中に含めていますが、労働=労働者派遣法などの改正問題でしょうし、環境は、CO2排出25%削減への懸念を示したものと思われますが、自己の利益のみを考える資本の論理で、地球環境や地域社会、国民生活に「企業」が果たす社会的責任・役割などは全く触れられません。

 次に興味深く読んだのが「レアアースの輸出制限や反日でもが続く中国のリスクをどう見ますか」 との問いに対する意見です。

 町田会長はこう言います。「比較的楽観的に見ている。(来年から5年間の中国経済の私心となる)第2次5カ年計画で所得倍増が打ち出されると思うが、現地の消費にプラスの効果が大きくありがたい。豊かになってくると、人は違ういいものが欲しくなる。大きなビジネスチャンスがある。デモやストのリスクは、それほど大きな問題とらえていない。」といいます。

 町田会長が、尖閣諸島問題や過去の侵略戦争に対する日中間の問題をどのように捉えているかわかりませんが、ビジネスはビジネスとして商魂たくましく中国市場に目を向けていることが、よく分かるし、「人は豊かになると、いいものが欲しくなる」「所得倍増はありがたい」と豊かさや所得倍増が消費を拡大するという経済の不可避的な発展を見越していることにも注目しました。

 ならば、日本国内の「消費拡大」は如何にあるべきか? ここでも、お聞きしたいところですが、残念ながら、その答えは記事にはありません。

 製造業が海外に移転し、モノづくり大国・日本の強みは失われるのでしょうか。の問いに、「残念だが結局そうなる」と町田氏は断言します。

 しかし、この意見にもひと言言っておきましょう。

 なるほど、多国籍大企業としては、市場で喰えるだけ喰って荒れ放題になれば、他の牧草地に移ればいいのかも知れません。 しかし、考えなければならないのは、そこに住む「人間」のことです。大企業は、どこにでも自由に移動できるが、中小企業やそこで働く人間はそうはいきません。大企業は、自由競争に邪魔だとばかりに規制緩和を求めますが、国民生活を守る経済ルールが必要です。なにせ、社会の主人公は企業ではなく「人間」なのですから。

 では。

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