「シャープ・町田会長」のインタビューを読んで。

 2月9日の徳島新聞の11面に「貿易自由化まずTPPから」「製造業の和の力結集を」シャープ・町田会長に聞くとのインタビュー記事が掲載されています。ここには財界のTPP推進論の基本姿勢が示されていて、手前勝手な資本の論理が浮き彫りに示され、興味深く読ませていただきました。

 町田会長のインタビューは冒頭、貿易を自由化する多国間の枠組みについて、「まずはTPPから始めるべきだ」と述べ、懸案となる農業の保護では、「メーカーが省力化やIT技術を提供して農業の競争力向上に貢献すべきだ」との考えを示したとあり、多国間の自由貿易の枠組みでは「熱心な米国が入っていることが前提だ」としてTPPの存在を重視とあります。

 町田氏は、TPPへの加入はアメリカ前提であり、実質上TPP参加が日米の自由貿易協定(FTA)であるとの認識です。その上で、町田氏は日本の国際競争力の低下を招いている要因として、貿易自由化交渉の遅れ、人口減少、円高、高い法人税率、環境、労働規制の五つを指摘し、人口減少では「生産人口だけでなく、国のパワーも落ちる。ある程度の移民制度を取る必要があるのでは」などと述べています。

 町田氏は「国際競争力低下」の要因として五つあげていますが、国際競争力の向上=生産コストの低下と置き換えてみれば、企業経営者の認識がわかりやすくなるでしょう。

 コストを下げて国際競争力をつけるためには「円高」は困るし、「労働規制」では、裁量労働を緩和し残業代もはらわなくていいようにしたい、労働者派遣法の抜本改正はダメ、非正規労働者を増やし賃金を抑えたいとの意図がみえみえです。「法人税」も高すぎるといい、「環境」とは関税の撤廃や部品調達網の効率を上げるということでしょうか。人口減少では労働力確保にむけた移民制度に言及、人口減少は国のパワーが落ちるといいますから、国内内需の確保はある程度「移民」でしのぐということかも知れません。

 しかし、日本経済にとって、今必要な経済改革は、外需だのみから内需中心のバランスの取れた安定経済の構築です。「円高」は困るといいますが、原因は、実は日本の過剰な国際競争力にあって、貿易収支の大幅な黒字が円高を招いているとの指摘もあります。   

 内需拡大を前提とした安定経済の構築という視点に立てば、労働規制の緩和などはもってのほか、しっかりとした人間らしく働くルールの確立こそ急務です。

 ちなみに2011年国民春闘白書の「データーブック」による、シャープの経営状況(内部留保)をみてみますと、2010年3月決算で、経常利益は309億円。シャープ74社連結の内部留保額は、9424億円。内現金及び現金同等物3281億円、従業員一人当たりの内部留保は1744万円です。シャープの正規従業員数は、53999人ですから、約100億円(内部留保の約1%)のを正規従業員5万4千人に還元すれば、一人月額1万円・ボーナスを含め年間で約20万円の賃上げが可能です。町田氏は法人税減税を求めていますが、減税の効果は、「内部留保」として溜め込むのでは、景気回復には何の意味もなしません。

 町田氏は、貿易の自由化によって農業が壊滅的打撃受けること事の懸念に対しては「国内の農業技術は世界でもダントツだ。農業の大規模化が前提だが、我々メーカーの省力化やIT技術を使うことで競争力が出る。どう協力できるか検討したい」とも述べています。

 農業規模の拡大というフレーズは、自民党時代からのものですが、日本の農地は、山間地に囲まれ、広大な平原に開拓されたアメリカやオーストラリアの農地と規模比べでコストを考えるのはそもそも間違いだと思います。既に北海道は、欧米の規模超えているそうですが、それでも壊滅的打撃は免れないといいます。規模の拡大・IT技術で日本の農業をコスト競争にさらし生き残れるというのは、現実を見て見ない振りをしているとしか思えません。国際競争にいかに打ち勝つかという経営手腕では厳しく企業のあり方を問う経営者が、農業ということになると実に脳天気な経営者の主張に代わる、ここに日本という国の全体のあり方を見ない、利己的な私企業の経営者の顔が見えてきます。

少し、長くなりました。もっと短く文章をと思うのですが~

では。

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