1月12日の新聞から、桜宮高校の体罰自殺事件について、二人の体罰論を対比してみました。一人は、大阪市長の橋下徹氏、そしてもう一人は、元プロ野球選手の桑田真澄氏です。
橋下市長「体罰を容認し、体罰のルール化を主張(しんぶん赤旗から)
桜ノ宮高校の体罰・自殺事件について、橋下大阪市長がテレビに登場し、「体罰が自殺の原因だ。徹底調査を」とか「これは傷害事件」などと発言している場面を放映。この放映を見て、橋下市長は「体罰」について、しっかり反対の立場かと思いきや、今朝(1/12)のしんぶん赤旗は、橋下市長の記者会見の全発言内容を報道。橋下市長は、体罰を容認したうえで、「体罰のルール化」を主張していたことがわかりました。
橋下徹大阪市長の発言~しんぶん赤旗(1/12)から
大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒が教員から体罰を受け自殺した問題で、橋下徹市長は10日、「正直僕は、クラブ活動の中でビンタをすることはありうると思っている」と体罰を容認し、「きちっとルール化できていなかったことが問題だ」などと主張しました。
橋下氏は教員による体罰について、「全国大会を目指す桜宮高校の体育科では、保護者も含め、ある程度の教育的な指導だという暗黙の共通認識があったのではないか」と発言。「にもかかわらず教育委員会が体罰禁止とか、手を上げることは絶対ありえないという、うわべっ面だけで事にあたっていたことが(事件)の最大の原因」と強弁しました。
その上で、実態解明と体罰をどこまで容認するかというルールづくりを主張し、「これは議論がでると思う。゛手を上げることを前提とするルールをつくるのか ゛ということになるでしょうけど、それはそれでまたその時に批判を受けながら議論していけばいい」などと語りました。
また、しんぶん赤旗は、橋下氏の「体罰容認語録」として、橋下氏が大阪府知事時代から体罰容認の発言をしていた点を指摘しています。
「口で言ってきかないなら手を出さなきゃしょうがない。」「どこまでを教育と見るかは家庭と地域のコンセンサス」(08年10月府教育委討論会)
「もみ上げをつまんで引き上げるくらいはいい」「胸ぐらをつかまれたら放り投げるくらいまではオッケー」「蹴られた痛さ、腹をどつかれた痛さが分かればば歯止めになる」(12年10月市教育振興計画有識者会議)
一方、桑田真澄さんは、朝日新聞の取材に応じ「体罰は不要」と訴えました。
早大大学院時代、プロ野球選手と東京六大学の野球部員に「アンケート」(550人)を実施した。体罰について尋ねると「指導者から受けた」は中学で45%、高校で46%。「先輩から受けた」は中学で36%、高校で51%でした。意外に少ないなと思いました。ところが、アンケートでは、「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%に上りました。「あの指導者のおかげで成功した」との思いからかもしれません。でも、肯定派の人に聞きたい。指導者や先輩の暴力で、失明したり大けがをし足りして選手生命を失うかもしれない。それでいいのか、と。
私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。監督が采配ミスをして選手に殴られますか?スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。殴られるのが嫌で、野球を辞めた仲間を何人も見ました。スポーツ界にとっては大きな損失です。
指導者が怠けている証拠でもあります。暴力で脅して子どもを思い通りに動かそうとするのは、もっとも安易な方法。昔はそれが正しいと思われていました。でも、例えば、野球で三振した子を殴って叱ると、次の打席はどうすると思いますか?何とかしてバットにボールを当てようと、スイングか縮こまります。「タイミングが合ってないよ。他の選手のプレーを見て勉強してごらん」。そんなきっかけを与えてやるのが、本当の指導です。
今は、コミュニケーションを大事にした新しい指導法が、多くの本で紹介されています。子どもが10人いれば、10通りの指導法があっていい。「この子にはどういう声かけをしたら、伸びるか」。そう考えた教え方が技術を伸ばせるんです。
「練習中に水を飲むとバテる」と信じられていましたので、私はPL時代、先輩たちに隠れて便器の水を飲み渇きをしのいだ。手洗い所の蛇口は針金で縛られていましたから。スポーツ医学も、道具も、戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。
体罰を受けた子は、「何をしたら殴られないで済むだろう」という思考に陥ります。それで、子どもの自立心が育たず、自分でプレーの判断ができません。殴ってうまくなるなら誰もがプロ選手になれます。私は、体罰を受けなかった高校時代に一番成長しました。
アマチュアスポーツにおいて「服従」で師弟が結びつく時代は終わりました。今回の残念な問題が、日本のスポーツ界が変わる契機になってほしいと思います。(聞き手・岡雄一郎)
以上、二人の「体罰」に対する見方について、新聞報道から対置してみました。
もちろん私は、桑田真澄氏に大軍配です。
では。