朝日新聞社説~「TPP参加で日本を前へ」を批判する。

 TPP交渉参加表明を数日後に控えた今朝の朝日新聞の社説は、TPPの交渉に日本も加わるべきか、否か。と前置きし、まず、「改めて主張したい。まず交渉に参加すべきだ。その上で、この国の未来を切り開くため、交渉での具体的な戦略づくりを急がなければならない。」としている。

TPP~日本に未来戦略なし

朝日社説は、「まず参加」といい、「交渉での未来戦略づくりを」というが、今の日本政府に未来戦略が果たしてあるといえるのか?もし、あるというなら、日本がTPPに参加して、これもしたいあれも必要だと、当然国民に未来戦略の説明があってしかるべきではないか。TPPで聞こえてくるのは、アメリカからの対日要求であり、アメリカ「基準」の規制緩和が日本の未来戦略とでも言うのだろうか。

朝日は言う、「資源に乏しい日本は戦後、一貫して自由貿易の恩恵を受けてきた。と」しかし、このロジックは、TPP問題を「開国か鎖国か」という論法で単純化しTPPに参加しなければ「鎖国」で日本経済が行き詰るかのような錯覚と誤解を国民に押し付けるものだ。

日米の平均関税率は? 米国の関税撤廃狙いは農産品

 TPP交渉参加9カ国に日本を加えた10カ国全体で、内需規模は、アメリカと日本で90%以上を占めることは周知の事実で、TPPが事実上アメリカと日本の二国間自由貿易協定にあたるとこは明白だが、WTO2010によると、米国と日本の平均関税率は、鉱工業製品(非農産品)で日本1.2%対米国1.9%そして農産品の平均関税率は日本12.5%に対し米国4.1% となっていて、非農産品(鉱工業品)の関税率は日米両国とも低く差はほとんどなく、農産品の格差があり、TPPの関税障壁撤廃の狙いが関税格差の高い農産品の自由化にあることは明白です。

社説は、TPPと農業問題についてどうふれているか。

 社説はいいます「TPP参加で産業の一部や生活が壊される」との懸念にどうこたえていくか~

「まず農業である。特にコメへの対応が焦点だ。政府は、経営規模を現状の10倍程度に広げる方針を打ち出している。ばら撒き色が強い個別所得補償制度の見直しをはじめ、TPP問題がなくても取り組むべき課題である」

 私は率直に朝日に聞きたい。社説で、TPP交渉参加で未来を開けといいながら、食料安保とも言われる「日本農業のあり方」について、政府の規模拡大方針を示すのみで、社説は何一つ農業の未来について述べていないではないかと。

 また、社説は「消費者の利益が原点」との小見出しで規制緩和の問題を論じている。世界各地での反市場主義、格差拡大への懸念が「米国の言いなりになるのか」とTPP反対論を後押ししているが、ここは冷静になって「何が消費者の利益になるのか」という原点に立ち返ろう。という。反対派の主張に、業界の利益を守る思惑がないのか。真に必要な規制を見極め、米国などの要求にしっかり向き合いたいと述べる。

 この論法には、あきれるやらおそれいるやらだ。一見消費者の側に立っているかのように装いつつ、米国の規制緩和の要求に「しっかり向き合え」というのですから。しかも、反対派への攻撃として、暗に規制が「業界の利益を守っている」かもしれません、との疑念を抱かせる論法なのですから。

今、世界は社説がめざしていると思われる「新自由主義」との決別が求められています。市場開放で一部の巨大大企業が潤っても、国民はますます貧困となる現実を朝日新聞社はどう見ているのか。権力と向き合い国民の側に立ったTPP報道こそ、朝日新聞にはふさわしいと思うのですが。 いかが。 では。

 

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