野田首相は環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加問題について、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議までに党の意見をまとめるよう指示したと朝日新聞(10日付け)が報じました。
TPPへの参加によって、日本は何を得、何を失うのか一目瞭然です。TPP推進派は、農業規模の拡大や高品質の農業生産で、国際競争力をつけるなどといいますが、農家一戸当たりの経営規模は、米国が日本の99倍、オーストラリアが日本の1902倍と、とてつもない開きがあり、農水省の試算でも日本農業は現在先進国で最低の自給率39%ですが、TPPへの参加によって、13%にまで落ち込む事になります。国民の食料供給をほぼ完全に外国に委ねてよいものでしょうか。現在でも、日本の農産物の平均関税率は12%で、EUの20%に比べてすでに「開国」状態です。
その一方で、得ようとするものは、一部大企業の対アメリカへの輸出関税の引き下げですが、すでに多くの大企業は、部品調達組み立てなど現地生産の比重を高め、現状でも十分な利益を上げ、この2年間で日本の主要大企業の内部留保は17兆円も積み増しし、内部留保の総額は257兆円にも達しています。
環太平洋連携協定といえば、多くの国との連携と思いがちですが、貿易の実態から言えば、事実上日本とアメリカ二国間の完全自由貿易協定ともいえる内容です。コメ・牛肉などあらゆる農畜産物がアメリカから流れ込み、医療の分野では国民皆保険制度がくずれる危険性をはらんでいます。労働市場の自由化で、賃金の低い外国人労働者の大量導入に道をひらけば失業と低賃金化はさらにすすむことは目に見えています。財界やアメリカの尻馬にのるTPPへの交渉参加は亡国への道であることをあらためて訴えたいと思います。