二 民主主義とは
こんどの憲法の根本となっている考えの第一は民主主義です。
ところで民主主義とは、いったいどういうことでしょう。
みなさんはこのことばを、ほうぼうできいたでしょう。
これがあたらしい憲法の根本になつているものとすれば、みなさんは、はっきりとこれを知っておかなければなりません。
しかも正しく知っておかなければなにりません。
みなさんがおおぜいあつまって、いっしょに何かするときのことを考えてごらんなさい。
だれの意見で物事をきめますか。
もしもみんなの意見が同じなら、もんだいはありません。
もし意見が分かれたときは、どうしますか。
ひとりの意見できめますか。それともおおぜいの意見できめますか。どれがよいでしょう。
ひとりの意見が、正しくすぐれていて、おおぜいの意見がまちがって、おとっていることもあります。
しかし、そのはんたいのことがもっと多いでしょう。
そこで、まずみんなが十分にじぶんの考えをはなあったあとで、おおぜいの意見で、物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがないということになります。
そうして、あとの人は、このおおぜいの人の意見に、すなおにしたがってくのがよいのです。
このなるべくおおぜいの人の意見で、物事をきめてゆくことが、民主主義のやりかたです。
国を治めてゆくのもこれと同じです。。わずかの人の意見で国を治めてゆくのは、よくないのです。国民ぜんたいの意見で、国を治めてゆくのがいちばんよいのです。つまり国民ぜんたいが、国を治めてゆく—-これが民主主義の治めかたです。
しかし国は、みなさんの学級とはちがいます。国民ぜんたいが、ひとところにあつまって、そうだんすることはできません。ひとりひとりの意見を、きいてまわることもできません。そこで、みんなの代わりになって、国の仕事のやりかたをきめるものがなければなりません。それが国会です。
国民が、国会の議員を選挙するのは、じぶんの代わりになって、国を治めてゆく者をえらぶのです。
だから国会では、なんでも、国民の代わりである議員のおおぜいの意見で物事をきめます。そいしてほかの議員は、これにしたがいます。これが国民ぜんたいでの意見で物事をきめたことになるのです。これが民主主義です。
ですから、民主主義とは、国民ぜんたいで、国を治めてゆくことです。みんなの意見で物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがすくないのです。だから民主主義で国を治めてゆけば、みなさんは幸福になり、また国もさかえてゆくでしょう。
国は大きいので、このように国の仕事を国会の議員にまかせてきめてゆきますから、国会は国民の代わりになるものです。この「代わりになる」ということを、「代表」といいます。
まえに申しましたように、民主主義は、国民ぜんたいで国を治めてゆくことですが、国会が国民ぜんたいを代表して、国のことをきめてゆきますから、これを「代表制民主主義」のやりかたといいます。
しかしいちばん大事なことは、国会にまかせておかないで、国民が、じぶんで意見をきめることがあります。
こんどの憲法でも、たとえばこの憲法をかえるときは、国会だけできめないで、国民ひとりひとりが、賛成か反対かを投票してきめることになっています。
このときは、国民が直接に国のことをきめますから、これを「直接民主主義」のやりかたといいます。
あたらしい憲法は、代表制民主主義と直接民主主義と、二つのやりかたで国を治めてゆくことにしていますが、代表制民主主義のやりかたのほうが、おもになっていて、直接民主主義のやりかたは、いちばん大事なことにかぎられているのです。
だからこんどの憲法は、だいたい代表制民主主義のやりかたになっているといつてもよいのです。
みなさんは日本国民のひとりです。しかしまだこどもです。
国のことは、みなさんが二十歳になって、はじめてきめてゆくことができるのです。
国会の議員をえらぶのも、国のことについて投票するのも、みなさんが二十歳になってはじめてできることです。
みなさんのおにいさんや、おねえさんには、二十歳以上の方もおおいでしょう。
みなさんのおにいさんやおねえさんが、選挙の投票にゆかれるのをみて、皆さんはどんな気がしましたか。
いまのうちに、よく勉強して、国を治めることや、憲法のことなどを、よく知っておいてください。
もうすぐみなさんも、おにいさんやおねえさんといっしょに、国のことを、じぶんできめてゆくことができるのです。
みなさんの考えとはたらきで国が治まってゆくのです。
みんながなかよく、じぶんで、じぶんの国のことをやってゆくくらい、たのしいことはありません。
これが民主主義というものです。 つづく
次回のあたらしい憲法のはなしは(5
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