神奈川県厚木市における公契約条例に関する調査概要(見田治)
公契約条例の制定は千葉県野田市にはじまり、現在(2017年2月)19市区の自治体において広がっています。(条例制定の他、理念条例制定の自治体も多数あり)
特に神奈川県においては、川崎市、相模原市、厚木市の3市において制定されていますが調査対象とした厚木市は人口が約22万5千人と徳島市の人口と比較的類似しており、また、制定後約5年余りが経過し、条例運用後の事業評価についても調査できることから厚木市公契約条例について、➀制定の経緯について②条例の内容について(契約の範囲・賃金・労働報酬審議会等)③運用後の状況④国及び県との関係等について、厚木市総務部契約検査課課長小沼浩之氏、同係長湯舟強氏ほか厚木市議会事務局長他事務局員(別紙.名刺を添付)から、資料提示の上説明を受けました。
提示いただいた資料は、
「調査事項・厚木市公契約条例について」
「公契約条例の手引き」
「公契約条例対象事業者、労働者向けアンケート集計」
「厚木市長の選挙マニヘェスト等」
「公契約条例制定スケジュール」
「仮称.厚木市公契約条例及び同条例施行規則骨子パブリックコメント実施結果について」
「公契約条例の労働報酬下限額が適用となる契約締結件数一覧(平成25~29年度)」
調査における成果について
まず制定の経緯・制定の流れにおいて、厚木市現市長が選挙マニフェスト(市民協働による自治を進める10の条例)において公契約条例制定がかかげられ、現市長の熱意ある取り組みがあり、事業対象となる労働者団体(労組)なども「労働環境の整備」「事業の質の向上」「事業者の経営の安定」など、事業者と労働者双方の理解が得られる基本方針を掲げ、18名の課長級による庁内検討委員会で骨子を作成した後、外部委員(事業者2名・労働者2名)による協議会の開催(3回)や関係団体、市民への説明会を行うなど労働者側、事業者側への配慮と納得を十分にとりつつ制定に至っていること。
また、運用後の状況においては、まだ5年余りという中で、華々しい成果という状況ではないが、運用後毎年対象事業者、労働者向けアンケートを実施し、運用後の評価を事業者、労働者双方からくみ取っていること。その中で、アンケート集計結果でも、「公契約条例について、93%の事業者の理解がある」「賃金について、おおむね増加している」「労働環境の整備について、64%の事業者が効果があった」「労働意欲の向上について、57%事業者が効果があったと回答し労働者も54%が労働意欲の向上につながると思う」などの回答に見られるように、条例制定の目的に照らして一定の成果を得ていることが明らかとなり、質疑応答の中で、公契約条例による最低賃金の引き上げが建設関連の若い労働者の定着に寄与しているのではないかなどの部局職員の認識も示され、質疑を通じて、最低賃金の低い地方においてはなお公契約条例の制定が労働環境の向上、ひいては労働者の流失の歯止めとして役立つものと認識を新たにするところとなりました。
以上報告します