「アベノミクス」の~落とし穴とは

 物価目標を2%に設定し、日銀に大胆な金融緩和(お札を刷る)をさせる。一方で、政府は建設国債を大量に発行し200兆円規模の大型公共投資を実施するという安倍新政権の経済政策(アベノミクス)が注目を集めていますが、大きな落とし穴を指摘しておかなければなりません。

 円安で~内需が拡大・給料があがるのかの疑問

 日銀がお札を大量に刷って大胆な金融緩和を実施し、円高から円安に誘導するといいますが、最終の経済目標は、「内需の拡大」であり、消費者(国民)の所得が増え、社会が安定し、物を買える力を与えなければならないはずです。円安で、輸出大企業は業績をのばすでしょうが、これまで輸出大企業は、際限のないグローバル経済の「国際競争力の維持・強化」を唱え、利益を働く労働者に還元せず、むしろ賃金の抑制(派遣・賃下げ)で利潤を伸ばし「内部留保」を溜め込んできました。輸出大企業が今度こそ利益を還元するというなら、今なぜしないのか?現在もできる体力をもっているのにです。したがって、輸出大企業が利益を上げれば、給料が上がるというのは、幻想にすぎません。もう一つは、円安は、国内の大部分の中小企業にとっては、輸入する原材料・石油などすべて「コスト高」となる問題です。つまり、コスト高となる中小企業の経営は苦しくなる一方で、給料を上げるどころではなくなる可能性がより高くなるでしょう。

物価だけが上がって、給料が上がらない~最悪の事態もあり得る

 アベノミクスで、はっきりしているのは、お札を大量に刷ることと、建設国債の大量発行で、200兆円規模といわれる大型公共投資の実施です。お札の増刷は、お金がだぶつくのですから、物に対し相対的にお金の価値が下がり、そういう意味では、モノの値段があがる。確実に「インフレ」となるでしょう。しかし、その物価上昇の分以上に「給料」が上がらなければ、いや、下がったままだったら、事態は最悪です。今のくらしよりもっと悲惨な生活となるのですから。

 もう一つ、建設国債の大量発行で大公共投資という政策ですが、大型公共事業へのばらまきは、従来自民党が散々やってきた手法にすぎません。一時的効果を生むかもしれませんが、少子高齢化社会のもとで、医療・福祉や教育・科学技術、再生可能な新エネルギーなど総合的な政策というより、「建設」業界だのみのイビツナ産業構造と利権政治の復活が懸念されます。そのうえ、減らすべしといった国の大借金は一層膨らむことになり、日本国債の大暴落の危険を指摘する声も聞こえてきます。

 自民党「型」手法では、解決できない~

結局「アベノミクス」は、財政出動(お札増刷・建設国債など)は政治的手法として実施するものの、企業が上げる「利益」を政治的に社会に還元させる「政治力」の発揮は主張していません。アベノミクスで上げた利益は、経営者の「自主判断」にお任せするにすぎず、これが、実は「格差と貧困」の拡大のおおもとです。

「格差と貧困」にこそメスを~政治力の発揮が必要です。

 資本主義社会の行き過ぎた「格差と貧困」に政治力を発揮できない「自民党型」政治と決別し、正社員が当たり前の雇用制度への転換、老後の安心など「社会保障制度」の確立、中小企業への補助制度をとりつつ千円以上への最賃引き上げなど賃金引き上げ、大企業の中小企業への不公正取引の禁止など、格差と貧困の拡大から、誰もが人間らしく働き、生きることのできる社会への政治力の発揮が求められているのてはないでしょうか。

 大きな観点で見れば、資本主義の中で生まれた「いびつ」な格差と貧困の是正こそ、景気回復・経済の立て直しの柱なのです。

 では。

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