徳島県市議会議員研修会・講演テーマ「地方創生」への対処術(東京大学大学院 金井利之教授)を聞いて

徳島市内は積雪・凍結で午前中大渋滞、一部西部地域の市議会のみなさんは欠席となったようです。
さて、金井氏いわく、「地方創生」というが、「かっこ」付きの地方創生には期待できないと、そもそも、歴代自民党政権が進めてきた「開発主義」「高度経済成長」が大都市圏への人口集中、過疎・過密を生み出すのは当然のことで、60年代から過疎問題(人口の過剰流出)が認識され始め、70年に「過疎法」が議員立法として制度化された。
その後、開発主義(経済自由主義)から田中角栄内閣の国土の均衡ある発展の方向へ向かうが、公共事業の散布による雇用創出効果はあったが地域発展として成功しなかった。90年代、経済の長期不況の中で景気対策のための公共事業による大きな財政赤字をかかえるようになり、財政出動に依らない経済政策は「経済業績に政治の正当性を支えられていた戦後自民党一党支配」に動揺が生まれ、以後「政治改革」が政治の大きな争点になる。
93年の細川内閣発足、94年村山内閣発足、しかし、金井氏いわく、政治改革(小選挙区制等)は「国土の均衡ある発展」体制の基盤を破壊したという。
なぜなら、小選挙区制によって、自民党候補同士の競合がなくなり、地方圏への実感・愛着・知識のない議員の世襲化がすすみだことをあげる。また、定数是正についても異議ありとのこと。
そして、「国土の均衡ある発展」体制から構造改革へ、いわゆる2001年の小泉=竹中構造改革内閣による「構造改革なくして景気回復なし」実態は、財政出動ではなく、規制改革による景気対策で、実態は、生産費用破壊によるデフレ悪循環経済だという。
「官から民へ、国から地方へ」の構造改革路線は、地方を重視する政策という意味ではなく、むしろ地方圏軽視の政策で、「国から地方へ」は負担を国から地方に押し付けるものであり、三位一体改革は税源移譲というが経済の弱体な地方圏には不利であり、構造改革特区・地域再生特区は一部の地域に差別的支援を国が与えるものでしかない。
そして、平成の大合併へ。金井氏は、かっこ付き「地方創生」の本質として、「弱肉強食・格差」体制の成立とみている。デフレ経済とゼロサム社会では、経済規模の拡大のない中で、互いに、他者から搾取して自己利益の追求するしかない。

ゼロサム社会とはアメリカの経済学者サローの用語。
「経済成長が止まり資源や富の総量が一定となって,利益を得る者がいれば必ずその分だけ不利益を被る者が出てくるという社会。」

企業の例として、「労働者を削減、賃下げ、非正規化、女性労働の供給増賃下げ、非正規化促進など、生き残りと自己利潤を図る企業の実態をあげる。行政の例では、「公務員のリストラで、住民サービスを維持する行政」をあげる。金井氏は、ただし、このようなことで総需要は低下するので、さらに経済収縮の悪循環になると警鐘をならし、そして、東京圏・都市圏の利益のために、地方圏への配分を減らすゼロサム・不均衡政策、すなわち「国土の均衡ある発展」体制は、マクロ的に崩壊し、国は地域間・自治体間の弱肉強食競争を扇動・先導する。「頑張っている自治体を応援する」という言説のように。結果として、パッチワークのような国土となる。例えば、「大半の放棄・放置された国土に一部の成功・繁栄しているムラ」「大半のスラム化した大都市圏のなかで、一部の富裕層のいる高級なヒルズ」を例に挙げる。
金井氏は、小泉政権以来、地方圏の構造的軽視が続いているという。第2次安倍内閣と「地方創生」では、政権の性格を「富国強兵路線」と位置づけ、2014年の地方創生(まち・ひと・しごと創生)の提唱について、自治体・地域関係者は久方ぶりの地方圏に国の政策的関心が及んだものと錯覚しているが、実は、アベノミクス効果が発揮していないことを紛らわす効果が、「地方創生」の本質で、その言説では「アベノミクスによって、都市圏では潤っているがその恩恵が地方に及んでいない」などという。アベノミクス評価を数年先に先送りし、そして、「地方創生」の効果が出ないうちに、2015年には「一億総活躍」で政策提起を更新する。私は目くらまし?の意味と理解しましたが。
金井氏は、このように自民党政権の「かっこ」付き「地方創生」について、「地方創生」政策には、地方圏が全体として浮上する要素は何もないと、切り捨てた上で、では、地方はどのように対処するのかについて、セーフティーネットとして地域社会と住民生活の保障こそがマクロ的に必要だという。そして、苦境にあえぐ自治体・地域・住民の生活を支えるのが国の責務であり、そのために、地方圏自治体が一致団結して国に求めること。緊縮財政と大都市圏偏重に拘束されている国は、地方圏を保障する構造基盤がない。だから、経済政策や政治の構造を反転させることも不可欠という。
金井氏の政治経済の分析は大いに傾聴させていただきましたが、消費税を体制維持のために「是」とすることについては、いかがなものでしょうか。貧富・格差社会の是正を目指すうえで、逆進性のある消費税こそまずただすべき税制だと思いますが。では。

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